F-07
高揚する五感 —
極みのID。IDINGPOWERコンプリートカーのチューニングおよびデザインにおいては、ベースとなる車両の性能および造形に溶け込む一体感を持たせながらも、歴代のIDINGPOWERコンプリートカーとの共通した、まるで五感に訴えかけるかのような刺激あるレスポンス、そして情感にも似た雰囲気までを込めることで、IDINGPOWERの ”らしさ” を体現することが基本となります。
IDINGPOWERにおけるコンプリートカー開発という行為は“存在”の再定義です。不特定多数のユーザー向けに開発・販売された車両に対し、IDINGPOWERが追求する究極域でのドライビング体験を付加するために、ベース車両が生まれ持ったパフォーマンスをさらに先鋭化し、それを具現化するための素材や技術を厳選してパーツを作り、組み込み、走らせ、評価する。そうした人の手による丁寧かつ入念な創作行為を通してIDINGPOWERコンプリートカーとして再定義することで、そこに新たな“存在価値”を生み出していくのです。
あくまでも車両トータルでの世界観を仕立てることを重視しているため、いたずらなハイパワー化やパーツ単体を目立たせることでベース車両との“違い”を主張する――このような手法を採ることはありません。
そのこだわりはもちろん、IDINGPOWERコンプリートカーのひとつの“極み”として生み出されたF-07の開発においても貫かれています。IDINGPOWER代表の井手新勝が“魂”を込めてチューニングしたフェラーリ社製のV型12気筒NAエンジン / F140B、さらには極限まで高められたパフォーマンスを効率化させることに寄与する機能的かつ流麗なエクステリアデザイン――内側からも外側からもF-07という存在に触れる者の五感を高揚させる突き詰めたパッケージングが高次元で融合された、まさに“究極”と呼ぶべき魂がF-07には吹き込まれているのです。
Engine
IDINGPOWER は、1990年にテスタロッサ用のボクサー12(F113)をベースとしたフェラーリ製エンジンのチューニング(5.0→5.4ℓ化)を本格的にスタート。その後も328(3.2→3.5ℓ)、348(3.4→3.7ℓ)、F355(3.5→3.6ℓ、3.8ℓ 2仕様 /初のコンプリートモデル / F365 &F385)、F430(4.3→4.6ℓ / F460GT)、360モデナ(3.6→3.8ℓ / 380GT)と、世界でも類を見ない内面にまで手を入れた本格的なフェラーリ・チューナーとしての実績を、これまで数多く積み重ねてきました。
今回、その集大成として生み出されたF-07は、長年の研究と開発を重ねたスペシャルクランクを用いて、ベースとなったENZO FerrariのV型12気筒NAユニット / F140Bの排気量を5998ccから6298ccへとストロークアップ。ピストンやコンロッド、インテークバルブといったムーヴィングパーツにも徹底したバランス取りと軽量化を施し、圧縮比も高めることで、フェラーリ社が例えスペチアーレとはいえ“市販モデル”の領域では真に追求しきれなかった“内燃効率の極み”を、実に8年の開発期間を費やしてここに体現したのです。
もちろんオイルラインやウォーターラインといった潤滑系も熟練のエンジニアの手で念入りに磨き上げ、バルブタイミングも一切の妥協なく“分”の単位できめ細かく調整を施しています。
インテークシステム &エキゾーストマニフォールド(後述)のプロファイルを最適化したことでF-07のトルクカーブは理想的な曲線を描き出します。アイドリング(またはパーシャルスロットル)からの立ち上がりですでにベースとなったENZO Ferrariとは明らかに異なる、人間の五感に鋭く呼応するかのようなレスポンスを示します。中間加速域でのアクセルペダルの“付き”の良さは、まさに“人馬一体”を体現するに相応しいダイレクトさを極めているのです。
最高出力は708ps(520kW)/ 8000rpm、最大トルクは666Nm(68Kg・m)/ 5400rpm 、圧縮比は11.5:1と、ベースとなったENZO Ferrariのスペックシートと比しても、それぞれPS/ℓ112ps、9Nm、0.3という数値の向上に留まり、そこにいたずらなスペックアップを図ることはありません。
それでいて“人馬一体”のダイレクトな生きたレスポンス、シチュエーションを選ばないスムース極まるトルク特性を発揮する点が、IDINGPOWERコンプリートカーの証。極限ではあれども制約ばかりの多いレーシングエンジンではなく、あくまでパフォーマンスの幅があり信頼性(耐久性)にも優れたストリート最高峰のエンジンを乗り手に提供する。それこそがIDINGPOWER一流の、エンジンチューニングに対する信念なのです。
Exhaust system
よりスムースな吸気、よりスムースな排気、そしてそれに呼応する安定したメタルキャタライザー。究極の吸排気効率を実現するためにIDINGPOWERは日夜、研究と開発を重ねました。プロファイルを完全に見直し、極限のパフォーマンスと扱いやすさを両立させた理想的なエキゾーストシステムを開発。よりスムースな排気効率を追求したレイアウトの結果、マフラーエンドはリアグリルの中央へと移し、F-07のエクステリアデザインを特徴づける“機能美”までもがそこに体現されたのです。またベース車両では可変式だったインテークのファンネルを理想の位置で固定し、より伸びやかで力強いトルクカーブを与えることにも成功しています。
Exterior / Front
ベースボディの ENZO Ferrari が持つFormula 1マシンのノーズを連想させる造形をさらに強調するようにリデザインされたボンネットに、ウイング形状のフィンを備えるフロントグリルを組み合わせることで、IDINGPOWERコンプリートカーとしての特徴的なフロントエンドを体現しました。また、ホイールハウスから取り込まれた空気の排出を強化するためのエアアウトレットを、フェンダー上部にヘッドライトユニットと一体化する形状で追加しています。
Exterior / Rear
フィンを備えるエアアウトレットを持つバンパー部と、マフラー・ディフューザーを統合して大型化が図られたリアグリルを組み合わせるリアエンドは、F-07のひとつのデザイン的なハイライトと呼ぶべきセクションです。どちらもエンジンコンパートメントからの排熱を効率化させる狙いがデザインの起点となっており、まさに機能を追求したからこその美が、そこには体現されているのです。
同様にエンジンフード上面にもフィン付きのエアアウトレットを設定し、リアホイールハウス後方のエアアウトレットを拡大することでリアバンパーから空気の排出を促進しています。
F-07のスタイリングでの特徴的な印象の要素であるリアグリルにおいては、日本の伝統文様である矢羽根からイメージしたパターンを採用しています。ここには『イタリア製の ENZO Ferrari に日本人の手が入ることで、パフォーマンスを先鋭化する』というIDINGPOWERのコンセプトが込められています。
グリルのパターンは遠目にはよくあるハニカムパターンのグリルに映りますが、近づいて見ると単純な網目ではなく、奥行き方向にも意匠を施した複雑で繊細な形状で構築されていることが理解できることでしょう。この既存製品にはない手の込んだ形状を具現化するために、DMLS(Direct MetalLaser Sintering)方式によるAM(Additive Manufacturing)を採用しています。
Wheels & Suspension
IDINGPOWERオリジナルデザインでのフェラーリ用ホイールは、1995年のフランクフルト国際モーターショーで発表したコンプリートカー、F365-S3がその起源となります。この時の18インチ鍛造アルミホイールに採用された変形5本スポークデザインは、後のF460GTに合わせて開発された19インチ鍛造マグネシウムホイールにも受け継がれました。そしてF-07の20インチ鍛造マグネシウムホイールにおいても、そのイメージを継承しています。
性能面ではENZO Ferrari のオリジナルホイールが19インチ鋳造マグネシウム製でフロント:12.20kg / リア:14.60kgであることに対し、F-07の鍛造マグネシウム製ホイールは20インチにサイズアップをしながらもフロント:11.20 kg / リア:12.88kgと軽量化も果たしています。
サスペンションはベース車両のショックアブソーバーを独自でリセッティングしたことに加え、専用レートのスプリングを用いて軽量なホイールとマッチしたよりしなやかな乗り味を実現しています。
EMS / Electric mirror system
より美しく伸びやかなボディラインと空力性能を求めてサイドミラーを排除し、最新鋭の小型電子カメラ式のミラーシステム / EMSを採用しています。このシステムは2007年にデビューしたF460GTで開発がスタートし、F-07でより先鋭化されました。後方視界はメーターナセルに純正品のように左右でフィッティングされたバックモニターで確認することが可能です。高速走行中でも視線を大きく動かすことなく後方視界が得ることが可能です。
Spec
-
725ps
8,000rpm
Horse Power -
650Nm
5,400rpm
maximum
torque -
Video